白竜戦記

MMORPG UltimaOnline 無限シャードにて開催のPCイベント白竜戦争の記録置場
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# 【転載記事】【白竜戦争】どこかの神殿で血は流れ【22日目】
 会計士Renの記録

権利書のおさめられた人食い箱をめぐり
匪賊と商人がぶつかり合う中
Ren達傭兵は―――

「【白竜戦争】どこかの神殿で血は流れ【22日目】」

 盟主Lavaに遣いを命ぜられた。
 とあるものの買出しだ。
 寄り道もせずに、用だけを済ませて私は砦に帰った。
「遅い」
 帰った私にかけられた第一声はそれだった。
 頭から足元までの全身を覆う黒いローブ姿。
 目深に被ったフードがトレードマークでもある赤いバンダナをも隠してはいるが、数回とはいえ見たことのあるその格好はLavaのものだった。
「ごめんなさい」
 言葉では謝るものの、私の顔は明らかに笑っていただろう。
 せっかちなところもあるLavaは待つのが余り好きではない。
 だが、そんなに遅くなったわけでもない。
 彼が黒ローブ姿の時は決まって「お忍び」で出かける時だ。
 その「お忍び」に出かける時間が迫っていたため、気が急いているだけかもしれない。
 本人も自覚があったのだろう。
 笑っていた私に、面白くない顔をしながらも、更に何を言われることもなかった。
 ただ一言「行ってくる」と マントを翻し、Lavaは傭兵砦を後にした。

  *  *  *


 盟主が居なくなった後の砦は静かになった。
 Lavaは今日は戻れないと言っていた。
 そして、他の人間も戦場へと駆けつけられない事情があったようだ。
 傭兵砦に集まったのは、ほんの数人だった。
「海底神殿の噂、ききました?」
 ぽつっと誰かが囁いた。
 いつもならば賑やかな砦が静かだと、皆の声もいつも以上に小さいものだった。
「聞きました。
 接待旅行で出かける高官が権利書を『海底神殿』に隠していったとか」
「商人と匪賊は狙うみたいですね……うちはどうします?」
 何枚隠していったのかは知らないが、隠していくからにはある程度の枚数に違いない。
 だが、私は首を振った。
 隣でSturmも私に同意した。
 神殿とは名ばかりのそこは、罠が仕掛けられていると聞いた。
 罠だけならばいい。
 だが、その入口は洋上。
 匪賊に属す海賊が得意とする戦場だった。
 ザキ船長が去った後、傭兵同盟に船を扱える人間は2名。
 LavaとFortisのみ。
 開戦した頃からFortisは、この日だけは確実に参戦は無理だといっていた。
 そしてLavaはお忍びで出かけてしまった。
 つまり、傭兵同盟は船で神殿へたどり着くことが出来ない。
 たどり着くことが出来たとしても、操船巧みな海賊に蹂躙されるだけだ。
 死んだとしても楽しめればいいが、楽しむ前に死ぬことがわかっていて船を出すわけにはいかない。
 引きこもるしかないか。
 そう思った矢先である。
「じゃあ、商人島にでも電撃戦しかけるか」
 ちょっと買い物に、と言うような気軽さでStrumが笑った。
 笑ってはいたが、その目は本気だった。
 戦いたくてうずうずしている傭兵たちは、頷くといそいそと準備を始める。
「じゃあ、いってらっしゃい」
 死んでも権利書の再発行は私が出来る。
 名ばかりとはいえ、副盟主である私が電撃戦でもしておいでというべきだったのかもしれないが、戦場を知らない身で、戦場へ人を追いやることをしたくなかった。
 Strumに感謝しながら、私は彼らを見送った。

 数分後。
 彼らは直ぐに帰ってきた。
「なんか商人島に匪賊が一人いたから落としてきた」
 なぜ商人島に……と思ったが、名を聞くと、匪賊において斥候なども担当する知った名前の人間だった。
 斥候の任務中に傭兵に出会うとは災難だなあと思いながらも、傭兵たちは一人も死なずに、権利書を得た。

 そしてしばらくの後。
 また戦い足りない戦士たちが挙動不審になり始めた。
 傭兵たちは血の気が多いといつも思うが、今日ほどそれを再認識した日も無い。
「いってらっしゃい」
 私は今日二度目になる見送りをした。

  *  *  *

 Lavaが帰って来たのは明け方も近い頃。
 皆が寝静まろうとしていた時間だった。
 海底神殿では多くの血が流れた、と、Lavaは語った。
 お忍びでどこへ行っていたのかは知らないが、情報通な男だ。
 高官が隠した権利書を得たのが商人だったという情報さえ得ていた。
 だが、私たちは海底神殿の権利書の行方の話は右から左だった。
 盟主不在時に自分たちが何をしていたか、先を争って話し始めたのだ。
「待て、お前ら。
 俺は帰ってきたばかりなんだ。
 酒の一口も飲ませろ!」
 そういいながらも、笑いながらLavaは皆の話を聞いていた。


 たとえ死んだとしても、楽しそうに帰ってくるのが傭兵たちだ。
 神殿にいかなかったとしても、引きこもるなんて最初から傭兵の性にはあってなかった。
 どこかの神殿で血が流れたらしい。
 だが、それは誰かの物語。
 私たちには私たちの物語があった。

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