白竜戦記

MMORPG UltimaOnline 無限シャードにて開催のPCイベント白竜戦争の記録置場
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# 【投稿レポート】【白竜戦争】 サイドストーリー マジンシアレクイエム 第六幕
 

 注:この物語に登場するキャラクター名はすべてフィクションです。

今語られる23年前のマジンシアの物語―――


 【白竜戦争】 サイドストーリー

―マジンシアレクイエム―



 
―第六幕―



 



海に向かって落下する『白竜の心臓』は、だが、海には落下しなかった。

ザックは、ボートまでの距離を測り、落下地点がボートの中央になるべく、天高く放り投げたのだった。



その間に二人はボートへと駆け込み、ニーナはその懐にボートの中ほどに転がった『白竜の心臓』をしっかりと抱き、ザックは剣でボートを固定するロープを断ち切ろうと

していた。

だが、ザックの腕力では一撃でロ−プを断ち切ることは叶わなかった。



そこへ『白竜の心臓』が海に落ちぬとわかり、硬直から覚めた船員たちが殺到する。



(はやくっ、はやく斬れてくれっ!)



ザックは焦りながらも、剣をノコギリのように使いロープの繊維を断ち切っていた。

最後の一刀とばかりによじれたロープを一気に切断するべく、剣を大きく振りかぶる。



(あともう少し!・・・これでどうだっ!!)



ブンッ―



「ザックっ!!あぶない!」



ニーナが叫んだのと、唸りを上げ飛来したバダムの放った1本のクロスボウの矢が、ザックの腹のあたりをめがけ一直線に飛来したのはほぼ同時だった。



ドスッという矢が肉に突き刺さる嫌な音は、だが、ザックの腹から聞こえたのではなかった。

それは、矢がザックを襲う瞬間に、ザックに抱きつき、自らを盾にしたニーナの背中のあたりから聞こえてきたのだった。



次の瞬間に起こった出来事はザックの眼には、なぜかスローモーションのようにゆっくりと映った。



「!?っ、ニーナ!?」



うっ、という声を一つあげ、ニーナはボートの船底に崩れ落ちたのだった。



「おいっ!ニっ、ニーナ?!」

「なんてことを・・・しっかりしろ、おいっ!ニーナァー!」



矢を引き抜いた矢傷から流れ落ちるニーナの血は、必死に血止めをするザックの努力もむなしく、ニーナの傍らに転がる『白竜の心臓』に向かって流れていた。

それはまるで『白竜の心臓』がニーナの血潮を吸っているかのようにも見えるのだった。



もはやザックには、意識なく横たわるニーナの感触以外はなにも感じられなかった。



バダムと船員たちがボートを取り囲み、クロスボウをこちらに向け、ザックを矢衾にするべくその引き金を引き絞るのも見えてはいても、避ける気持も起きぬのであった。



片膝をつき、仰向けにしたニーナの頭を立てている膝に乗せ、しっかりと抱きかかえながらザックは最期の時を待った。



(ごめんよニーナ、オレがあんな命令を聞いたばっかりに・・・ごめん・・・守れなくてごめんよ・・・)



ドクッ、という音がすぐそばで聞こえた。

ザックはそれを矢が自分に突き刺さる音だと思った。

だが、しかし、痛みも衝撃もは感じはしなかった。

続けて、ドクッと音がしたときにも、2本目が突き刺さったのだと思った。だが、またも痛みは感じないのだった。



ザックはもう、なにもかもがどうでもよくなっていた。



(ニーナは死んだ・・・俺のせいで…俺の…)

ニーナを抱きしめ、1個の沈黙の彫像と化しているザックの耳に、しだいに

ざわざわと、不審な船員たちの声が聞こえてきた。



「お、おい」

「なんだ、この音…」

「こ、これ心臓の…」



ザックは見てはいなかったが、船員たちは不安そうに互いに目くばせし、気味の悪いドクッ、ドクッという音の方を見ていた。



そのとき、「あっ!!」という声が聞こえた。



ニーナを掻き抱くザックの傍らから、膨大な青い閃光が天空に立ち上ったのをバダムと船員たちは目撃したのだった。

そしてドクッ、ドクッという音は、もはや疑いようのない脈動する心臓の鼓動の音であった。



直視できぬほど青く輝く『白竜の心臓』は脈動を続けながら天空に青い閃光を送り続けている。



「せ、船長!あ、あれは・・・!!」



船員が天空の一点を指し、その場の全員が見た。



ザックも、深い慟哭のなか、ぼんやりと天空を見上げた。



ザックとその場にいた者たちが見た物は、月はいつの間にか姿を消し、暗黒となった天空を、ゆっくりと旋回している青く透き通った巨大な竜の姿であった。



青き竜が旋回するにつれて、海上に突風が吹き荒れ、波が逆巻き、ついには渦を巻きはじめていた。

アンブロシア号はゆっくりと、だが確実に渦の起こす波に引き込まれていった。



その時、青き竜がすさまじい咆哮を放った。

それは聴く者の聴覚ではなく、魂そのものに突き刺さる巨大な杭の如く響き、それを受けたものは激しい恐慌をきたすか、精神力が弱いものであれば発狂してしまうほどの咆哮であった。



船はどんどんスピードを増し、渦の中心へ流されていた。



バダムと船員たちは恐慌をきたし、あるものは発狂し、我さきに船から飛び降り海に逃れようとしていた。

だが、海に逃れたところですさまじい大渦に巻き込まれ、たちまち海底に引き込まれていった。



バダムは、まだ船に残っていた。『白竜の心臓』があきらめきれないのだ。

その欲望と執念には竜の咆哮も、大渦の恐怖も敵わぬのであろうか。

だが、しかし、そうではなかった。人間の尽きぬ欲望こそがすでに狂気なのであった。



「くくく、の、逃すものか・・・俺の宝石・・・、よこせ俺の宝石・・・」



バダムが狂人の笑みを浮かべてボートに手を掛けたとき、船が激しく揺れ、ザックとニーナの乗るボートはアンブロシア号から切り離された。



「!?」

「ま、待て!ほ、宝石っ!!俺の宝石をっーー−!!」



バダムを乗せたアンブロシア号は渦の中心で、まるで海神の伝説に出てくる海神の両手でへし折られたかのように真っ二つになって消えた。





勢いで吹き飛んだ二人を乗せたボートは、大渦の外側から物凄いスピードで渦の中心に向かっていた。



「っく・・・、ザッ・・くっ」



意識の戻ったニーナは小さく、ザックを呼んだ。



「ニーナ!?ニーナっ!!」



もはや、話す体力など残っているはずもない。それは、ニーナの愛という力のなした、奇跡なのかもしれなかった。



「ザッ・・く、白りゅ・・うの・・し、しんぞうを、おね・が・いっ。うっっ、マ、マジンシアに、か、かえして・・・」



ニーナも自分も、もう助からぬと覚悟を決めていたザックであったが、ニーナの願いは聞き届けたかった。



「わかってる、大丈夫だよ、だからもう・・・なにも・・・心配ないよ」



「よかっ・・た、ザッく・・・わ、たし・・、わ・た・・し、ザっ・・くの、ふね・・にのり・・・た、かった」



ザックの頬をとめどなく流れる涙が、ザックの手に重ねたニーナの白い手に落ちる。



「ニーナ、もう・・・ずっと・・・二人だよ。ニーナ・・・ニーナ」



ニーナの美しい紺碧色をした瞳から、次第に光が失われていった。



「じ、じ・ゆ・・うに…ふ、たり・・・で・・・うみ・・・へ・・・」



ためいきのような呼吸をひとつすると、ニーナの身体から力が抜けた。



「二、ニーナ?おい?ニーナ?死ぬなよ・・・なぁ・・ニーナァ・・・」



「ニーナアアアァァ!!」



ザックの痛恨の叫びは、二人の乗るボートとともに轟々たる大渦に飲み込まれたのであった。



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―終幕―



翌朝、マジンシアの東からやや赤みがかった太陽が昇った。

それは、昨夜の海での悲劇に、太陽が血の涙を流していたようにも見えた。



だが、不思議なことに、夜の出来事に気がついた街の人々は誰もおらぬのであった。

輝く閃光を見た者や、青き竜の咆哮を聞いた者も、誰一人として。



しかし、街は深い悲しみに包まれ、さまざまな噂が飛びかっていた。



それは、朝一番で仕事に出る漁師が、港の外れの一角、漁師ギルドと商人ギルドの建物の影になる芝生の上に、冷たく横たわる少女の遺体を見つけたことが発端であった。



まだ、十代も半ばの宝石商の娘が矢傷を負い、海からうちあげられてきた不可思議な事件は、一夜で姿を消した輸送船の謎とともに、人々の間に様々な憶測を呼んだ。



特に、人々が不可思議に思ったのは、海からうちあげられた少女が仰向けに倒れ、両手をきちんと胸のところで組み、その腕には青白く輝く石を大切に抱いていた

ということだろう。さらに少女の身体には、まるで、少女の体が冷えぬようにと思いやるかのように、色褪せたボロボロのベストが掛けてあったのだった。





その島の海の色はいつも美しい青であった。

まるで碧玉を溶かしたかのごとく澄み渡るマジンシアの海の色は、それは悲しいほどの青なのであった―



                                                             マジンシアレクイエム  完





*この物語はフィクションです








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